サンゴの卵?
サンゴの産卵とはいいますが実際見ているのは卵ではなく、卵と精子の入ったカプセルです。サンゴはほとんどが雌雄同体とされていて産卵の際にはこの両方が入ったカプセルを放出します。まだ正確に解明されていませんが同じカプセル内の精子と卵は受精することが出来ないとされていて、そのため周りの同種のサンゴが同じタイミングで一斉にカプセルを放出することで受精する確率を上げており一般的に「サンゴは同日同時刻に産卵する」といわれるのはこのことからです。
(ややこしいので以下の文中ではこのカプセルを”卵”と書きますね。)
サンゴ内の“卵”の成熟には水温や海中の栄養状態が関係していると言われています。
また、産卵日については月齢周期が関係していてサンゴたちは種類ごとに満月かもしくはその前後の日程で同種が日没からの時間に同調しているそうです。
つまりサンゴたちは、どういうわけか海の中で月の満ち欠けを知り、日没からの時間を計って同じ種類が同じ日のほぼ同時刻に“卵”を一斉に放出するのです。
卵からプラヌラ幼生、そして稚サンゴへ
同種のサンゴから放出された”卵”は水中や水面で割れ、精子や卵が海中で混ざり合い翌日には受精したプラヌラ幼生が誕生します。プラヌラ幼生の見た目は小さなゴカイのようなもので、自分で泳ぐことが可能ですが「めっちゃ速く泳いで逃げる」みたいな泳力はないためこの段階で捕食者に食べられてしまうこともあります。運良く生き残ったプラヌラ幼生は3日~1週間ほど経つと水中に潜って着床しポリプへと変態をとげてようやく稚サンゴになります。
プラヌラ幼生はサンゴの種類にもよりますが、1か月近くも水面を浮遊し潮流によって何十kmも離れた場所に移動することもあるんです。
こうして遠くまで移動することで、自分たちの種の分布域を広範囲に広げて生き残っていこうとしているのです。
サンゴが生きていくうえで非常に重要なのが褐虫藻(かっちゅうそう)です。
褐虫藻とはサンゴの排泄物や二酸化炭素を取り込み、光合成を行うことで出来た酸素や栄養をサンゴに与える藻類のことで、サンゴと褐虫藻は一緒にいることでお互いが利益を得る共生関係にあります。
稚サンゴは体の中に褐虫藻(藻類)を体内に取り込んで、炭酸カルシウムを分泌し石灰質の硬い骨格を作りながら分裂してクローンを作ってどんどん成長していきす。環境にもよりますが成長の早いサンゴであれば1年に20cmほども成長します。
どんな大きなサンゴも年月を重ねて分裂を繰り返したクローンの集合体で、元は一つの小さな稚サンゴが成長した姿ということになります。
海の中でのサンゴの役割
サンゴが分裂しクローンをどんどん作る成長過程でサンゴ自身が出す二酸化炭素を共生する褐虫藻が取り込みますが その代わりに褐虫藻は酸素をたくさん放出しそれをサンゴが成長のために取り込みます。この時作り過ぎた余剰分の酸素は海中に放出され、水中に酸素が溶け込み周辺にいる多くの生物の成長を促します。
さらにサンゴは成長過程で出来る余分な栄養を粘液という形で海中に放出しこの粘液を海に住む様々な生物が摂取し成長するための栄養源としています。また、サンゴが産卵をすることで”卵”を捕食するものもいます。
つまりサンゴとは酸素や栄養分や”卵”を放出することで、その海域にいる生物すべての循環の下支えをしているとても重要な存在といえます。
サンゴは世界中の海に数百種類存在しそれぞれが違う姿かたちしていて、雌雄同体ではなく明確に雌雄が分かれているものや、”卵”ではなくプラヌラ幼生を放出するものなど生きていく環境に合わせ多種多様です。そのため生態についてはまだ解明されていない部分も多く今回ご紹介したのは一例です。
まだまだ学ぶといろいろと面白サそうなサンゴのお話、その能力と生態を知ってから産卵を見てみるとより感動が増すかもしれませんね。